矛盾を抱え続ける就労継続支援A型…障害者雇用の行く末とは

2020年3月6日

矛盾を抱え続ける就労継続支援A型…障害者雇用の行く末とは

就労継続支援A型事業所のイメージ


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就労継続支援A型というと、ろくでもないイメージしかない

 

最も世間的に印象強かったのは岡山県の大型解雇でしょう。

 

NHKのサイトに非常にわかりやすいものがあります。

 

食い物にされる“福祉” 障害者はなぜA型事業所を解雇されたのか

 

 

 

就労継続支援A型=部屋に障害者を囲ってスマホ触らせて遊ばせている

 

 

という非常に悪いイメージが岡山県の大型解雇のニュースに合わせて全国的に報道されました。

 

勿論、当時A型事業所が総じてそういった行いをしていたわけではありません。

 

本当に一部、極一部の営利目的の事業所が行った結果、全国的に悪い形で報道されたということは事実でしょう。

 

とはいえ、ほかのA型事業所が健全な運営をしているのか、と言われるとそこにも疑問符が出てきてしまいます。

 

そんな矛盾を抱え続ける就労継続支援A型事業所の実態。そこについてここでは私見を交えながら解説していきます。

 

 

 

A型事業所がスマホを触らせているだけで儲けているカラクリ


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A型事業所がなぜ儲かるのか

 

A型大量解雇直前の2017年の岡山県で計算してみましょう。

 

障害者が1日4時間以上働くと大体5800円助成金が出ます。施設外就労をすると+1000円。

 

大体の数値ですが、1日障害者が働くと5800円~6800円ほど会社に入金される仕組みになっています。

 

では、支払いを見てみます。

 

最低賃金の全国平均は781円です。障害者が働く時間は4時間なので、1日約3100円の支出。

 

差し引きで、障害者の労働売り上げが0円であっても1日2700円~3700円もの利益が出てしまいます。さらに特定求職者雇用開発助成金という名目で、本来の助成金とは別に2年で最大80万円の助成金が支給されます。

 

もちろん、支給される助成金は本来障害者の賃金として支給するものではないため、3600円は売上から引っ張ってこなければいけませんが、当時は規制が非常に緩かったため、処罰がほとんどありませんでした。

 

その結果、通所だけさせて助成金をもらい、障害者に最低賃金分の支払いだけをし、最低ラインの労働時間の分だけ事業所にいてもらい、スマホを触らせるなど管理の必要がほとんどない状態で放置するということがまかり通ってしまいました。

 

では何が悪かったのか?悪徳A型だけが問題で、ほかに問題はなかったのか?続いて考えていきましょう

 

A型事業所の悪質化の要因…その背景事情を探っていくうちにA型事業所の矛盾…矛盾といってしまえば大袈裟ですが、非常に大きなハードルに気づきます。

雇用が困難な障害者に稼いでもらうということ


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まず、厚生労働省のHPからA型事業所の事業概要と対象者を転載いたします。

 

 

事業概要

 
通常の事業所に雇用されることが困難であり、雇用契約に基づく就労が可能である者に対して、雇用契約の締結等による就労の機会の提供及び生産活動の機会の提供その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練等の支援を行う。

 

対象者

 

① 就労移行支援事業を利用したが、企業等の雇用に結びつかなかった者

 

② 特別支援学校を卒業して就職活動を行ったが、企業等の雇用に結びつかなかった者

 

③ 企業等を離職した者等就労経験のある者で、 現に雇用関係の状態にない者

 

 

つまり、一般で働くことが難しい障害者の働く場の提供および訓練の場がA型です。

 

福祉的考えに寄り添うと、障害者が働ける場を提供し、一般就労への訓練を行うことが重要視されます。

 

 

事業所の収入(売上)-原価等の支出の差額から、利用者の賃金を支払わなければいけない

 

どういうことか2つの事業所を例にします。

 

A型事業所

会社名(仮):αシード

主となる業務:クリーニング業

売上      80万

利用者賃金  ▲60万

物件費    ▲20万

指導員人件費 ▲60万

助成金    100万

経常利益    40万

 

A型事業所

会社名(仮):βワークス

主となる業務:タオルの折り込み

売上      10万

利用者賃金  ▲60万

物件費    ▲0

指導員人件費 ▲10万

助成金     100万

経常利益    40万

 

 

どちらも同じ経常利益40万円の会社の業績としては成り立っていますが、収入ー支出≧賃金の部分を検査すると差が出ます

 

収入ー支出(※指導員人件費、助成金は含まれません)

 

αシード:80万ー20万≧60万

 

βワークス:10万ー0<60万

 

つまり、αでは達成しているが、βは達成していないことになります。

 

タオル折をしている事業所が最低賃金以上の売上を達成するためには今の6倍もの利益を稼げる仕事をとってこなければいけません…。

 

 

ここまで書いてお気づきの方もいらっしゃると思います。

 

A型事業所が達成する課題として非常に大きな壁というのは…

 

通常事業所で働けない障害者に、自分の賃金は自分で稼げる仕事を用意する

 

というものになっております。

 

 

現に、7割近くものA型事業所が2019年の調査では達成できておらず、経営改善計画書の提出を義務付けられています。

 

 

 

 

 

岡山大量解雇のような事態になったのは誰が悪かったのか?


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結論からいえば、事業所が最も悪く、制度の取り締まりが甘い行政の対応も悪く、通所していた障害者にも責任の一端はある。といえます。

 

当時よく、制度改正があって利用者が最低賃金以上の稼ぎをしなければいけなくなった!!!とA型事業所界隈では言われておりました。しかし、現実は違います。

 

 

 

カムラックさんのブログより

 

A型事業所の制度が厳しくなって利用者のお給料はすべて外部収入で賄わないといけなくなったと投稿してる事業者の記事を最近見ますが、そんなことはありません。
ルール上は昔からそうでした。

今までは監査する側が大目に見ていたところを厳しくしだしただけのことなんです。

しかも、A型事業の認可を受ける際は事業所側が役所に提出する事業計画書の売上をコミットすることで認可を受けられるわけですから、そんな被害者ぶったことを言ったり書いたりしている事業者はそれを知らないわけがないんです。
申請された事業計画書を公表した上で言えるのでしょうかね。

 

 

と、あるように、制度改正はありませんでした。ただ緩かっただけなのです。そしてそこの緩さの隙をついて悪質な事業主が立ち上げたのか、無知な事業主が立ち上げたのか…。

 

 

行政としても、制度を厳しくした場合に破綻する事業主が出てくることは予想されているでしょうが、ここまでの大量破綻になるとは想定されていなかったのではと思われます。

 

 

また、通所している障害者の方も、業務内容と給料を比べ、考えなければいけない。自己責任の部分もあるかと思います。TVのインタビューでは、騙された。信じていたのに等とありましたが、稼げる仕事をろくにしていない状態で給料だけきちんと払われることに矛盾を感じてほしいです。

 

 

今も経営改善計画書を出しているA型事業所は無数にあります。通所している障害者の皆さんは是非とも自分の仕事内容、周りの仕事内容を見て、この事業所が長く続くものなのか、今一度考えてみてください。

 

転職は非常に大変です。しんどいです。ただ、A型事業所の3割は少なくとも売上を上げています。

ぜひとも皆様がより安定した職場で幸福な人生を歩めるように祈っております。

 

 

 

 

福祉的考えと経営的考えの対立


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ある程度成熟していない段階のA型事業所では、しばしば福祉的考えと経営的考えの対立が起こります。まずは基本的な考え方の一例を提示します。

 

 

福祉的考え

一般で働くことが困難な障害者がA型事業所に来るため、合理的配慮に基づいて支援を行う。

また、訓練の場であり、本人の意思や自己決定も尊重しなければならない。

 

経営的考え

最低賃金以上の稼ぎをしなければいけない。障害者の意思も大事だが、仕事をこなすことを優先しなければいけない。

 

 

 

障害者と健常者の差

 

知的障害者、身体障害者、精神障害者、難病等…様々な障害の括りがあります。

若干問題になりそうな気持はありますが・・・、私見による傾向を記載いたします。

 

 

知的障害:

出勤率は高め。急な休みも体調不良以外では少ない。長期的な休みも少ない。精神的に幼く、社会とは、人とは、仕事とは等の部分が困難な場合があり、問題行動に繋がりやすい

 

精神障害:

出勤率が低め。精神的不調による当日休みもあり。崩れてしまうと長期的な休みに繋がりやすい。

 

身体障害:障害の部分以外は健常者に近い人が多め。例えばペースメーカー入りだと健常者との違いは殆どない。行政が殆ど採用しちゃって中々いない

 

 

身体以外は総じて、安定して働くことが困難な場合が多いです。

(だからA型事業所に来ているわけなのです)

 

 

 

 

 

仕事を取ってきてもやれる人がいない


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さて、貴方が営業マンだとします。

 

請負型、派遣型、どういった形であれ障害者が最低賃金分稼げる仕事を受注したいと思います。

精神障害Aさん、知的障害Bさん、指導員Cさんの3人で業務を行います。

 

さて、Aさんが精神的不調で急遽休みになりました。指導員が頑張るも仕事は終わりません。

Bさんが相手先の会社で、商品に対していたずら行為をして出荷しそうになり、全回収になりかけました。会社としてBさんにいってもらうことは難しくなりました。

 

さて、残りはCさんだけ…相手先の為に営業マンの貴方も現場に入り仕事をこなさなければいけなくなりました。

 

そういったことが何度も何度も繰り返されているうちに、営業マンのあなたは、他の障害者の方をその仕事につけさせてもらえないかと相談します。

 

しかし、障害者本人が希望しない限り、移動させることは難しいとの返答をもらいます。

 

 

また、他の仕事を取ってきても、やりたい障害者がいないのでできない。と言われます。

 

 

そもそも、一般で雇用されることが困難な障害者の方を障害者の意思優先で仕事を用意し、かつ最低賃金以上の売上を立てるというのは非常に難しいです。

そのため、幅広い分野に業務を広げることは難しく、一点特化型、もしくは親会社の仕事を請け負うA型事業所が好事例となっています。

 

 

次ではその好事例?を紹介していきたいと思います。